「パテラかもしれません…」と不安なあなたへ。子犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)は成長とともに変化することがあります
はじめに知って欲しいこと
子犬は毎日が成長期。だから「今」がすべてではありません。
子犬を迎えると、毎日のように新しい発見があります。
昨日までできなかったことが今日できるようになったり、足が長くなったり、体つきがしっかりしてきたり…。
子犬の体は、私たちが思っている以上に毎日大きく変化しています。
そんな中で、「パテラ(膝蓋骨脱臼)があります」と説明を受け、不安になってしまう飼い主さんはとても多くいらっしゃいます。
「将来歩けなくなるの?」
「手術しないとダメなの?」
「この子を迎えて大丈夫?」
そんな声をこれまで何度も耳にしてきました。
でも実は、子犬のパテラは、成長によって状態が変化することも少なくありません。
もちろん軽く考えてよい病気ではありませんが、必要以上に怖がる必要もありません。
まずはパテラという病気を正しく知ることが、一番の安心につながります。
ヒザの「お皿」がズレる病気。それがパテラです
パテラとは正式には膝蓋骨脱臼と呼ばれる後ろ足の関節の病気です。
膝には「膝蓋骨(しつがいこつ)」という小さなお皿のような骨があります。
本来は決まったレールの上をスムーズに動いていますが、そのレールから外れてしまう状態を「パテラ」といいます。
お家で例えるなら、ふすまや引き戸が溝(レール)から外れてグラグラしちゃってるようなイメージです。
少しズレるだけなら元に戻りますが、大きく外れるとスムーズに動かなくなってしまいます。
子犬では特に、
- 生まれつき骨格が細い
- 靭帯や筋肉がまだ未発達
- トイプードルやチワワなどの小型犬に多い
といった理由から「パテラ」と診断されることがあります。
「グレードⅠなら大丈夫?」実は成長で改善する子もいます
子犬期のグレードⅠの見方・判断
★グレードⅠは「様子を見ながら育てる」ことが多い
グレードⅠは、指で押すと外れるものの、自分ですぐ元に戻る状態です。
普段の生活では症状がほとんどなく、元気いっぱい走り回る子も珍しくありません。
実は子犬は筋肉や骨格がまだ完成していません。
そのため、成長して太ももの筋肉がしっかりしてくることで膝が安定し、以前より外れにくくなるケースもあります。
もちろんすべての子が改善するわけではありませんが、「グレードⅠ=すぐ手術」ということではありません。
定期的に状態を確認しながら、成長を見守ることが大切です。
「グレードⅡ」でも悲観しすぎなくて大丈夫
子犬期のグレードⅡの見方・判断
★毎日の積み重ねが膝を強くして体重を支えてくれます
グレードⅡは自然に外れることがありますが、自分で戻ったり、軽く足を伸ばすことで戻る状態です。
この段階でも、子犬の成長とともに筋肉が発達することで改善傾向を示す子は少なくありません。
さらに、ご家庭でできるケアもあります。
例えば、おすすめなのが膝の屈伸運動です。
難しいリハビリではありません。(・・・が、正しいお皿の位置でするのが大事です)
リラックスしている時に、後ろ足をゆっくり曲げたり伸ばしたりする程度で十分です。
もちろん無理に行う必要はありません。
嫌がる時は中止し、痛みがある場合は獣医師に相談しましょう。
毎日少しずつ続けることで関節周囲の筋肉が働きやすくなり、膝の安定につながることがあります。
まるで人間でも運動不足になると膝が弱くなるように、犬も筋肉が関節を支えてくれる存在なのです。
グレードⅢ以上でも「できること」はたくさんあります
子犬期のグレードⅢ以上の見方・判断
★大切なのは「悪化させない暮らし」
グレードⅢ以上になると、膝のお皿が外れたままになってしまう時間が長くなります。
歩き方がぎこちなくなったり、後ろ足を浮かせたりすることもあります。
この段階では、成長を見守りつつ獣医師と相談しながら今後の治療・お家ケア方針を決めていくことになります。
ただし、「グレードⅢだからもう終わり」というわけではありません。
生活環境を整えることで、膝への負担を減らすことができます。
例えば、
- フローリングには滑り止めマットを敷く
- 足の裏の毛をこまめにカットする
- ソファやベッドへの飛び乗り・飛び降りを減らす
- 階段をできるだけ使わせない
- 適正体重を維持する
これだけでも膝への負担は大きく変わります。
犬の膝は体重が少し増えるだけでも負担が増します。
逆に言えば、体重管理は今日から始められる「治療」のひとつでもあります。
手術という選択肢もあります
手術は成長過程や日々の状態で判断します
★必要な子には、「手術」はとても有効な治療法です
もし日常生活に支障が出たり、痛みが強くなったり、グレードⅢ〜Ⅳで改善が見込めない場合は、手術を検討することがあります。
「手術」と聞くと、とても怖く感じるかもしれません。
ですが、現在では多くの動物病院でパテラ手術が行われており、術後に元気よく歩いたり走ったりできるようになる子もたくさんいます。
もちろん手術には費用やリハビリ、一定期間の安静が必要になります。
だからこそ、「今すぐ必要なのか」「経過観察でよいのか」は、獣医師と相談しながらその子に合った判断をすることが大切です。
「この子を迎えてよかった」と思える未来は十分あります
パテラも個性・・・大切なことは?
★病気ではなく、その子全体を見てあげてください
以前、ある飼い主さんがこんなことを話してくれました。
「最初、パテラがあると聞いた日は一晩中ネットで調べて眠れませんでした。でも今では毎日元気に散歩して、ボール遊びも楽しんでいます。」
このようなお話は決して珍しくありません。
もちろん、すべての子が同じ経過をたどるわけではありません。
しかし、「パテラ=不幸になる」というわけでもないのです。
子犬は成長とともに体も変わります。
飼い主さんの工夫や日々のケアによって、快適な生活を送れる子もたくさんいます。
だからこそ、病名だけに目を向けるのではなく、その子の元気さや性格、食欲、遊び方など、「その子らしさ」を大切にしてあげてください。
一番大切なのは「過剰に心配しすぎないこと」
まとめ
★パテラグレードと対処法を理解して迎えれば怖くない
パテラは確かに小型犬で多く見られる病気です。
しかし、グレードⅠやⅡでは成長とともに状態が安定することもありますし、日頃のケアや生活環境の工夫によって悪化を防げるケースも少なくありません。
グレードⅢ以上であっても、体重管理や住環境の見直し、必要に応じた手術など、その子に合った治療法を選ぶことで快適な生活を送れる可能性があります。
一番大切なのは、インターネットの情報だけで必要以上に不安になることではなく、愛犬の様子をしっかり見守り、気になる変化があれば早めに獣医師へ相談することです。
子犬は毎日少しずつ成長しています。
焦らず、怖がりすぎず、その子のペースに寄り添いながら見守ってあげてください。
過剰に心配する必要はありません。しっかり観察し、必要なときに適切に対処してあげること。それこそが、愛犬の膝を守る一番大切なことなのです。
「じゃ、この子はどうなの?」の疑問を解消
【おまけ】DOLLz(基準)のパテラ判定
★何度も言いますが、子犬の骨格は成長で変化します!
DOLLzでパテラをチェックするのは45~57日齢あたりの成長真っ盛りのタイミングです。チェック時点の状態とこれからの変化(予想)を考慮して総合的に判定しています。また、近いタイミングで獣医師にもチェックしてもらいます。
一般的なパテラのグレード表記はⅠ~Ⅳですが、DOLLzではもう少し細分化してパテラを判定しています。
まずは一般的なパテラグレードを超簡単に書くとこんな感じ・・・
| グレード | 膝蓋骨位置 | 膝蓋骨動き | 歩き方 |
| Ⅰ | 正常 | 押すと外れるが、離すと元位置に戻る | 異常なし、症状ほとんどなし |
| Ⅱ | 正常 | 押したり屈伸で外れるが手で元位置に戻せる | 時々スキップする |
| Ⅲ | 外れてる | 手で元位置に戻しても、手を離すとまた外れる | 足をかばうように歩く |
| Ⅳ | 外れてる | 手で押しても元位置に戻せない | 足が曲がったまま伸ばせない |
DOLLzのパテラ判定
A:膝蓋骨を押すと『軽く左右に揺れる』ように感じる状態(軽度な膝蓋骨不安定症)
B:【A】状態よりも膝蓋骨が『大きく動く』が、溝から脱落する感じはしない状態(膝蓋骨不安定症)
C:膝蓋骨を押すと『溝から脱落する』が、手を離すとすぐに正常な位置に戻る(膝蓋骨亜脱臼)
D:【C】状態よりも『かなり簡単に溝から脱落する』そして手で押さないと正常位置に戻らない(膝蓋骨脱臼)
E:膝蓋骨位置が『かなり不安定』な状態、手で正常位置に戻せるが、屈伸で脱落する場合も多い(膝蓋骨脱臼)
F:膝蓋骨は常に脱臼状態で整復できない(固まった)状態(ロッキング)
一般的なパテラグレードとDOLLzのパテラ判定を表にしてみると・・・
| 一般的なグレード | DOLLzの判定 |
| グレードⅠ未満 | 【A】・【B】 |
| グレードⅠ | 【C】 |
| グレードⅡ | 【C】~【D】 |
| グレードⅢ | 【D】~【E】 |
| グレードⅣ | 【E】~【F】 |
★DOLLzではパテラはこう見てます
| DOLLz判定 | 見立て |
| 【A】 | 恐らく成長過程で改善する。全く気にしない |
| 【B】 | 成長過程で改善する可能性大、ほとんど気にしない |
| 【C】 | 成長過程で改善する可能性はあるが、悪化させないよう飼育環境等を少し気にする |
| 【D】 | 成長期に膝蓋骨を正常位置で安定させるべく『屈伸運動』を行い、悪化させない対策をとる |
| 【E】 | 成長やリハビリでの回復は難しいが、手術による回復の見込みは大いにある |
| 【F】 | 犬の将来やQOLを考慮すると早期の手術を推奨したいところ |
※パテラ判定はチェックのタイミングやチェックする人(獣医師でも異なるくらい)によって変動します。判定は「絶対ではなく参考程度」・・・と考えてください。

